富士山に登ったときのお話

疾患や治療のお話ではありませんが、所属講座から依頼をいただき作成した原稿を、一部編集し掲載します。
メタボリック体系となった40代半ば、患者さんに提案している「体を動かしましょう」を実践すべく、近辺の屋島、日山、上佐山、岩瀬尾山などに登るようになりました。大体は一人ですが自然の空気は気持ちよく、そのうちに日本最高峰の富士山に登りたいと思うようになり、高松市立みんなの病院に勤務させていただいていた2023年に、東京発着の富士登頂バスツアーに参加しました。今は価格や条件など異なることもありますが、ご了承ください。
東京発着のツアーは山荘宿泊や交通を考えるとコストに優れ、数やバリエーションも豊富で、ガイドもおられ、安全です。主な登山道は4カ所ありますが、今回の山梨県富士スバルライン五合目から登山する吉田ルートは、山小屋やトイレなどの設備が充実し、登山道も整備されており最も人気があります。開山期間はルートにより多少変わりますが、7月上旬~9月10日です。4月頃から山小屋の宿泊予約ができますが、混雑し希望日の予約が難しいのに比べ、ツアーは比較的余裕があるようでした。ツアーでの登頂率は天候の影響により60%ほどと言われています。このことを踏まえ、念のため二回計画し、山開き間もない7月11~12日には、宿泊した鳥居荘(本七合目2,900m)から1時に出発し山頂でご来光を迎える予定でしたが、0時頃荒天予想のため中止となりました。中止発表と5時頃下山の際は、さほど荒天ではなく残念でしたが、夜半にツアーを離脱し山頂へ向かわれた数名の方は、帰りのバス出発時間に集合場所へ戻ってこられず(事故などではないようです)、スタッフの正確な判断と富士山の気象の厳しさを実感しました。

二回目は、8月29日に最終便で東京へ向かい、新宿で宿泊しました。荷物は1gでも軽くするべきと言われ、前回の経験も踏まえ、前述の装備と財布や鍵、携帯電話とモバイルバッテリー、下着1組、500mlのペットボトル(水とスポーツ飲料)、チョコレート、グミ1つずつです。登山中はトイレ利用に100-200円、水500mlのペットボトルが400円程かかり、現金払いが主のため、100円玉、500円玉、1000円札は必要です。翌朝6時半に集合場所の東京都庁大型バス駐車場よりバスで出発し、北口本宮冨士浅間神社を参拝しました。富士山に対して「艮(うしとら)」の方位に鎮座し、富士山北口の起点となり、写真の参道は富士一合目からの登山口ともなっています。

富士スバルライン五合目に移動し、高山病予防に1時間半程滞在する間に富士山ラーメン(写真)を食べ、13時に出発しました。

その時点で気温16℃程と涼しく、気持ちも盛り上がりました。登山口入口手前で富士山保全協力金1,000円を支払いましたが、今年は入山料が4,000円になり、入山制限や装備の確認も行われるようになったそうです。6合目までは40分程のなだらかな登りで、一部下り道や森林もあり、足慣らしにはちょうど良いです。途中、救急搬送車がすれ違いました(写真)。

下写真は六合目のトイレです。200円で現金またはPayPayが使えました。

森林限界を超えた6合目からは砂利と岩場を登っていきます(写真)。

前回宿泊した鳥居荘(下写真、奥の赤い鳥居を超えた所にあります)を超え、18時半過ぎに宿泊する白雲荘へ到着しました。

通常4時間半程の行程ですが、今回のツアーは登頂しやすいように休憩が多く設定されており、参加者の9割が登頂し、8割程がお鉢巡りもできました。夕食のカレーをいただいた後、800円のビール(写真)ののど越しは忘れません。

翌朝は3時に起床し、3時半に出発しました。風が強く8℃ほどで寒い(その日、高松の最高気温は31℃で同時刻27℃でした)けれど、ワクワクしていました。暗く強い風の中、ヘッドライトで岩場を照らし登り、5時過ぎに本八合目付近でご来光を見ることができました。

最後の一登りを経て6時40分に吉田口の山頂にある久須志神社へ着きました(写真)。豚汁(温まりました)を食した後、お鉢巡りへ。

富士山頂の火口を囲む登山道を一周することをお鉢巡りと言い、距離は2.8kmで累積標高差は280mほどあり、2時間ほど要します。お鉢巡りの方向に決まりはありませんが、仏教の礼法である右繞(うにょう)に基づき右回りが正式の説があります。また、富士山の場合、日本最高地点の剣が峰(3,776m)直下にある馬の背と呼ばれる登山路は、峰の左右両側が切れ落ちている急斜面で、かつ固い岩盤の上に砂が載っていてとても滑りやすく、下りでは転倒してけがをするリスクが高いため、私たちも右回りでロープと手摺を頼りに登りました。途中、浅間大社奥宮での写真には、後から知りましたが、同日に登山家の三浦雄一郎さんが富士宮ルートで登頂されており、使用された山岳用車椅子が左奥に写っていました。

剣が峰での写真で火口をのぞき込む左手部分が日本最高地点です。

お鉢巡りを終え下山となりますが、吉田ルートは、登りと下りで登山道が分かれており、登りは特に後半は一人通るのがやっとの岩場が多く、時に登り道を間違えて降りてくる人とすれ違うことも大変です。下りは砂利の坂がジグザグに延々と続きます(写真)。

前回は7合目からの下りで、翌日まで一段の上り下りができないほど膝を痛めたため、二回目はサポーターを購入し、下りの歩き方も調べましたが、今回は8.5合目で痛くなりました。山頂から富士スバルライン五合目までの下りの3時間ほどは、ただ膝が痛く、同様に膝を痛めた他の参加者の方と励まし合いました。五合目に到着した後は、バスで新宿まで戻ります。15時頃出発し、途中温泉入浴休憩を経て19時半頃新宿で解散となりました。一泊し、翌朝高松への空路の際に、窓から見える富士山を身近に感じました。

最近は、近くの山にもなかなか行けませんが、屋島や岩瀬尾山は自転車でも通え、涼しくなるこれからの季節に登ります。それぞれ2~3時間で登り降りもできれば、一日かけて縦走などもできる楽しい山だと思います。いつか富士山にもう一度登頂することを目標に、日々診療させていただきますので、よろしくお願いします。